公園にいるカラス

害獣の原因と主な対策、害獣の特徴

獣害対策における地域の役割。一人一人にできること

獣害被害を受けやすい地域では、農業関係者や自治体だけでなく、住民一人一人の心がけと地域全体の対策が必要になります。

地域全体で取り組む重要性

獣害被害には農作物や林業への被害が多いことから、農林水産業に従事していない地域住民の中には「自分には関係ない」と感じている方が多くいる現実があります。しかし、獣害被害の原因である「野生動物による人の生活圏への進出」は、農作物の高騰や地域の衰退、そして住民のケガや事故などの健康被害を招く原因になる可能性もあるため、本来であれば一人一人が意識すべき問題なのです。

実際に地域全体で獣害対策を行っている地域でも、ちょっとした抜け目が仇となって被害が減らない例も多く、9割以上の住民が協力的であっても残りの1割が非協力的な状況だと、対策が徹底されず効果が得られない場合もあります。

山林に住む野生動物が地域に進出する原因には、生息頭数の増加や自然環境の変化など様々な問題がありますが、農業の機械化と人手不足によって山林近くから人の気配がなくなったという農業の現代化も深く関わっています。このような状況を打破する画期的な解決策がない限り、野生動物の生息頭数は増え、生息地は拡大してしまいます。

農林業への影響はおろか、地域にイノシシやシカ、サルなどが出没するようになり、動物に噛まれた、庭を荒らされた、ペットがケガをした、子供が追いかけられたなど、地域全体への被害が深刻化してしまう可能性もあるのです。被害を深刻化させないためには、被害が発生した初期段階での対策を、住民全員で徹底することが重要です。

また、近年ではイノシシやシカ、サル以外に、アライグマやカラス、タヌキ、ハクビシンなど外来生物を含む様々な動物が都市部で生活している様子も観察されており、野生動物の生息域が私たちの生活の身近に迫ってきています。これらの動物の中には、人間のゴミ置場や家庭菜園の作物を食べて生活している動物もおり、対策には地域住民の協力が必要不可欠になります。

地域で出来る対策とは

被害を及ぼす動物(害獣)や被害の種類によって地域で出来る対策は多種多様ですが、ここでは隠れ場をなくすこと、餌場をなくすことの2点について対策内容をご紹介します。

まずは隠れ場をなくす事についてです。野生動物は基本的に人間に好んで近づくことはなく、本来は人の姿が見えれば遠くにいても逃げていきます。そのため、人間が住む地域に入っていくためには隠れ家となる草木や茂みが必要不可欠です。

すでに人間の生活圏内に野生動物の出没が確認されている場合は、動物の住処や街までの侵入経路を特定し、隠れ場となっている草木や茂み、使われていない近隣の農地(耕作放棄地)を整備すると効果的です。この隠れ場の整備は害獣を寄せ付けなくするだけでなく、街の景観を良くすること、空き缶や吸い殻のポイ捨てを抑止することにも繋がり、地域全体を美しく保つことにも繋がります。

次に餌場をなくす事についてです。人間の生活圏に出没する動物の中には、山林の食糧不足で餌にありつけない個体や縄張り争いに負けた個体がいることがあります。これらの個体は餌に対する執着が大変強く、同じ場所で何度が餌にありつくと「ここに来れば食べ物がある」と学習してしまい、隠れ場が撤廃されても餌のために移動してくる場合があります。

動物に餌だと認識されるものの中には、田畑の農作物、地域のゴミ置場、庭の家庭菜園、公園や空き地で放置された落下果樹なども含まれ、あらゆる面からの対策を講じる必要があります。ゴミ捨て場荒らしが目立つ地域の対策を例に挙げると、ゴミ置場に忌避剤を含んだ鳥獣被害防止ネットを被せる、簡易型のゴミステーションを設置する、指定された日時位以外のゴミ捨てを禁止するなどの対策が考えられます。

被害が大きく人へ危害を加える個体である場合は、加害個体の捕獲も視野に入れて市町村職員や狩猟免許保持者と迅速な対応を取りましょう。

地域住民への広報

ここまで住民一人一人の取り組みと心がけが重要であることはご説明しましたが、最も大変なのは、それぞれの住民に危機感を持って日常的に取り組んでもらうための説明と広報です。それぞれの住民が仕事や家庭を持って日々を過ごす中、獣害対策はつい行政や専門家に任せてしまいがちです。

ですが、獣害対策において一部の人だけが行う対策は中途半端になりがちで、なかなか成功が望めないのが現状です。

そこで住民全体の共通理解を促すために効果的なのが、被害地図の作成です。自分たちの地域でどの畑が被害に遭っているのか?山林から被害のある田畑まで、動物たちはどの道を通って侵入しているのか?隠れ場や餌場になりそうな場所はどこにあるのか?を1枚の地図にまとめ、回覧板に挟んだり、市町村からのお知らせとしてポスト投函を行ったり、地区の掲示板に掲示したりすることでより多くの人に見てもらうことができます。

「野生動物による被害が増えています」という抽象的な注意喚起だけでなく、「どこで」「どのくらいの被害が」「いつ」発生しているのか?を具体的に示すことで、自分たちの身近に起きている問題であることを再認識してもらい、同じ地域に住んでいる住民であるあなたに何ができるか?を効果的に伝えることができます。

-害獣の原因と主な対策、害獣の特徴