ノミ・ダニによって人間が受ける被害には、どのようなものがあるのでしょうか?
身近に潜む危険だからこそ知っておきたい人への影響や対策をご紹介します。
ノミ・ダニによる人的被害とは?
野生動物(害獣)との接触や 間接的接近によって、人間に及ぶ被害のことを総じて”人的被害”と呼びます。
具体的な例
- 害獣を追い払おうとして噛まれる
- 威嚇されて引っかかれる
- 車での移動中に動物と衝突事故を起こす
- 何らかの経路で感染症にかかる
- 害獣に付着していたノミやダニ、ヒルなどが人間を吸血する
しかし、その被害の多くは正しい知識があれば事前に避けられる被害でもあるため、本記事では人的被害の中でも日常生活に身近なノミ・ダニによる人的被害について、その症状や原因、日頃からできる有効な対策などをご紹介します。
ノミの生態について
ノミは世界中に多くの種類が生息しており、野生動物だけでなく人間のペットとして身近な犬猫にも近い存在です。
成虫は体長1〜2ミリと、肉眼で見えないこともありませんが、日常生活の中に潜んでいるノミを見つけ出すのは困難だと言えます。
体は小さいながらもジャンプ力が驚異的で、体長の約60倍の距離、約100倍もの高さを飛んで人間や動物に飛びつきます。
人間に被害を及ぼすノミのほとんどはネコノミとイヌノミという種類で、その名の通り犬や猫についているノミが人間の血を吸うことで症状が出るのです。
ダニの生態について
ダニも ノミと同様世界中に様々な種類が生息しており、その種類は2万種近いと言われています。人から吸血するダニもいればそうでないダニもいるなど、吸血対象はダニの種類によって変わります。
その中でも日本で一般的なマダニは、通常草むらや茂み、畑などに生息しており、二酸化炭素や体温などを感知して、シカやタヌキ、野ウサギ、野ねずみなど野生動物の体にそっと乗り移り、毛をかき分けて皮膚から吸血します。
ダニ類の多くは数日にわたって吸血を続けるため、ダニの体は日を追うごとに血で満たされ、体はどんどん大きくなります。
ノミによる感染症と寄生虫
近年のノミによる被害はペットの犬猫やノラ猫を経由した被害が多く、ここでは代表的な例を3つご紹介します。
- ノミ刺咬症
最も一般的な症状で、ノミに刺されて痒くなる症状のことを指します。蚊やマダニは1箇所で吸血するのに対し、ノミは複数回吸血を行い、刺された場合は連続して複数の指し口が見られるのが特徴です。POINT
ノミに刺されると患部は激しいかゆみを伴い、条件や体質によっては細菌感染を起こして水ぶくれを起こすこともあります。 - 猫ひっかき病
猫ひっかき病はノミ自体からの感染と犬猫からの感染の2つの感染経路があり、バルトネラ菌を持ったノミに噛まれた場合や、バルトネラ菌を保有したノミが寄生している犬や猫に噛まれたりひっかかれたりした場合に発症する病気です。
POINT
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- 2週間ほどの潜伏期間後に患部が痛くなる
- 患部が熱を帯びる
- 膿疱(のうほう)ができる・・・などの症状が出ます。
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- 瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)
これは瓜実条虫(サナダムシとも呼ばれる)という寄生虫がノミ経由で人間の体内に寄生する病気です。
体内への寄生と言われるととても恐ろしいイメージがありますが、サナダムシに限っては人間にとってほとんどが無症状で、知らず知らずに寄生されている人も多いといいます。POINT
稀に下痢や腹痛を訴える人もいますが、寄生虫駆除剤を使用すれば駆除も簡単にできます。
ダニによる感染症
ここではマダニの被害についてご紹介します。
マダニが媒介する感染症は大きく4つあり、ここではSFTS(重症熱性血小板減少症候群を指す。以下、SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、回帰熱をご紹介します。
- SFTS
SFTSは重症熱性血小板減少症候群の略で、2011年に初めて特定された新型の病気です。SFTSウイルスを持つマダニに刺されることが原因で、1〜2週間の潜伏期間を経て、発熱、食欲低下、吐き気、下痢、腹痛などの症状を起こします。SFTS患者の多くは 5〜8月の春から夏にかけて発症します。POINT
酷い場合はけいれん・意識障害などの神経症状や呼吸器症状が出ることもあり、軽視できない病気の1つです。 - 日本紅斑熱
こちらも噛まれてから発症までに1週間前後の潜伏期間があり、発症すると高熱・発疹などの症状がでます。刺し口付近にできた赤い斑点は、高熱と共に患部以外の手足や腹部、背部にも広がっていきますが、かゆみや痛みはありません。
POINT
ただし、かゆみや痛みが無いからと言って油断は禁物で、早めに治療を行わないと重症化するケースもあります。 - ライム病
ライム病とはインフルエンザのような症状を伴う病気のことで、ダニに刺されて1〜3週間の潜伏期間を経て発症します。
症状は筋肉痛、関節痛、発熱、頭痛、倦怠感など様々で、刺し口付近には遊走性紅斑と呼ばれる特徴的な模様で赤みが広がります。この遊走性紅斑とは布地に赤い水がひろく染み込んだような模様で、赤いアザのようにも見えます。
POINT
症状が進むと病原体が全身に広がってしまうので、早期治療が大切です。 - 回帰熱
回帰熱も潜伏期間が2週間程度あり、その後、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感などの似たような症状が出ます。
いずれの感染症も、個人の体調や体質に応じて個人差がある上に似たような症状が多いため、見た目だけでの判断は大変困難です。
その上、場所によっては刺されたことに気付かないまま症状に苦しんだり、ただの風邪だと勘違いして放置したりする場合もあります。

受診前にしておくこと
また、受診時にはペットの有無や体調の変化を感じた直近1ヶ月の野外活動、その日付、時間帯、できればその野外活動時の服装なども思い出せる範囲でメモしておくと良いでしょう。
野外活動時の服装がサンダルや半ズボンだった場合と、長袖長ズボンにその他ある程度の装備をしていた場合では、マダニからの感染を疑う比率も変わってきます。
ノミ・ダニ被害の原因と対策
ノミやダニによる人的被害の多くは、ノミ・ダニに刺されることが原因です。つまり、正しい知識を身につけて些細なポイントに注意し、”ノミやダニに刺されること”を防げば良いのです。
ここでは、野外で刺されない工夫、家に持ち込まない工夫、住みつかれない工夫の3つに分けてご紹介します。
野外で刺されない工夫
ノミやダニの多くは山や草むら、芝生、河川敷、野生動物の皮膚、ペットの皮膚などに生息しており、人間が草刈りや農作業、山で行うバーベキュー、キャンプ、登山、ハイキングなどで近くを通った際に服にくっついたり手足に飛び乗ったりすることで皮膚に到達して刺されてしまいます。
刺されないための方法
- 肌を露出しない服装を心掛ける
夏場でもできる限り長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴(サンダルを避ける)を積極的に身につけましょう。 - 虫除けスプレーの活用
これも比較的効果があり、マダニにはディートやイカリジンという成分が入った虫除け剤が有効だと言われています。

家に持ち込まない工夫
ノミ・ダニによる被害の厄介なところは、野外で刺される被害だけでなく、一度家の中に持ち込んでしまったらその場所に適応して住み着き、繁殖活動を続け、家庭内でダニ・ノミが増えてしまうことです。
野外活動をするにあたって注意して長袖長ズボンを履くなどのノミ・ダニ対策を行ったとしても、服やタオルの表面に付着している可能性も十分あります。
帰ってきてそのままの服でゆっくりしてしまっては、服に付着したノミやダニがソファーやじゅうたんに移動してしまうなど、せっかくの対策が無駄になってしまいます。
帰宅後に徹底すること
- すぐに入浴して着替える
- 服はすぐに洗濯する
外で使用した上着やタオルなどは洗濯カゴに放置せずにすぐに洗濯しましょう。 - 動物の出入りを管理する
自宅で飼育しているペットの出入りや ノミ・ダニ対策もさることながら、ノラ猫や野生動物の敷地内の出入りにも注意しましょう。
都心部での野生動物侵入や糞害
近年、山林近くの住宅だけでなく都心部でも家屋への野生動物侵入や糞害が報告されており、それに伴ったノミ・ダニの被害も増えています。
ノミやダニは野生動物に寄生して生きているため、家の中に野生動物が住み着くと、それらの害虫が発生しやすくなるのは当然です。
天井裏で動物の足音や鳴き声がしたり敷地内で野生動物のフンらしきものを発見したら、専門業者や地方自治体に相談してみましょう。
ノミ・ダニが住みやすい環境を家から排除する工夫
ノミやダニは肉眼で見えづらいほど小さいため、普段生活する室内にいても被害が出ない限りなかなか気づきにくいものです。
ノミは湿気があって室温が高めの場所を特に好み、髪の毛やフケ、人やペットの食べカスなどをエサにしているため、ソファーやじゅうたん、イヌネコ用のベッドなどは格好の住処となります。
気づかない間に住み着いて繁殖していることも少なくありません。その環境を排除するためには、こまめな掃除と薬剤散布、ペットのノミ取りが効果的です。
掃除のポイント
- 掃除機で落ちているごみを吸い取る
- じゅうたんの汚れや髪の毛を粘着テープで取り除く
- 掃除後のゴミはすぐにゴミ捨て場に捨てる、密封して隙間のないようガムテープで止める
ゴミ箱の中に放置してしまうと、その中でさらにノミ・ダニが繁殖してゴミ箱から出てしまうなど、せっかくの掃除も意味がなくなってしまします。 - 定期的にコインランドリーの乾燥機にかけて徹底駆除
ソファーカバーや絨毯などの洗濯をしにくい素材の対策としておすすめです。
ペットのノミ取りについて
獣医さんに相談するのが最も確実ですが、ペットショップやホームセンターでも豊富な種類が販売されていますので、ペットの生活スタイル(室内犬なのか、庭で飼育しているのか等)に応じて最適な商品を選びましょう。