国で定められた全48種の狩猟鳥獣について、よく似た非狩猟鳥獣との見分け方のポイントを紹介します。
また、万が一非狩猟鳥獣を狩猟してしまった場合の対処法を解説します。
狩猟鳥獣・非狩猟鳥獣とは?
現在日本国内には多種多様な野生鳥獣が生息しており、その数は約700種にも上ります。
その中でも狩猟できる48種の鳥獣を「狩猟鳥獣」と呼び、狩猟者はその48種を正確に見極めて狩猟する必要があります。
それは、鳥獣保護管理法という法律で「狩猟とは“法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をすること”」と定義されており、狩猟鳥獣以外の鳥獣を狩猟することは禁止されているためです。
全48種の狩猟鳥獣は、農林水産業への害性や生息状況への影響、狩猟対象としての価値など様々な面を考慮した上で、鳥獣保護管理法施行規則によって選定されており、鳥類が28種類と獣類が20種類指定されています。
ただし
狩猟鳥獣全48種一覧
■ 鳥類28種類
カワウ、ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く)、キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス
■ 獣類20種類
タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(ツシマテンを除く)、イタチ(雄のみ)、チョウセンイタチ(雄のみ)、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌ-トリア、ユキウサギ、ノウサギ
間違えやすい狩猟鳥獣と非狩猟鳥獣の見分け方
先述した通り狩猟鳥獣以外の鳥獣を狩猟することは法律で禁止されているため、今後狩猟を行いたい人は必ず、全48種の狩猟鳥獣の名前や姿、形、特徴を覚えなくてはなりません。
ここでは見た目や習性が似ているために間違えやすい狩猟鳥獣をいくつか解説します。
1例目、カモ目 カモ科 コガモ
日本全国に生息する渡り鳥(冬鳥)で、全長は約40cmとハトより少し大きめです。その特徴は、目の周辺から首の後ろにかけて広がる緑色の模様です。
この特徴はオスにのみ見られる模様であり、メスは全身が褐色で、他のカモ類のメスとは見分けにくいです。
間違えやすい非狩猟鳥獣
トモエガモは、コガモと同じく目の周辺から首の後ろにかけて緑の模様が広がりますが、緑の模様が若干異なり、涙の跡のように目尻の辺りから緑色が二股に分かれています。
また、大きさもコガモより若干大きいです。

2例目、カモ目 カモ科 クロガモ
日本全国に生息する渡り鳥(冬鳥)で、全長は約50cmとカラスよりやや小さめの海ガモです。海に面した崖などに多く生息し、潜水して海底の貝類などを捕食します。
オスは名前の通り全身・くちばし共に黒く、くちばしの付け根に付いている黄色のコブが特徴的です。一方メスは、オスより少し小さく、全身が暗褐色で多種のカモのメスとの見分けが難しいです。
間違えやすい非狩猟鳥獣
両種ともオスは全身が黒いため、一目見ただけでは間違えやすいのですが、外見の特徴の他に生息地や習性などを覚えておくことで判別が可能です。
- ビロウドキンクロ:目の周りや翼に白い部分があるうえにくちばしの色や形状が異なります。
- オオバン:くちばしと額が白いため、顔周辺を注意深く観察することで、クロガモとの見分けがつきます。また、オオバンは池や湖などの淡水域に生息するため、海に面した崖に多く生息するクロガモとは生息地の違いから区別できます。

3例目、ハト目 ハト科 キジバト
日本全国に生息する留鳥で、全身は約33cmとハトと同じくらいの大きさです。
公園や民家など人の生活に近い場所から畑や森林まで様々な場所で小さな群れを作って生息し、夜は樹上や茂みなどで休んでいます。植物食のため、畑の作物などを食べて農作被害になることがあります。
間違えやすい非狩猟鳥獣
これらも、全身の模様や生息地等を正確に覚えてさえいれば、比較的簡単に識別できる種です。

4例目、ネコ目 イタチ科 テン
沖縄を除く全国に生息しているテンは、夏毛と冬毛で見た目が大きく変わるうえに、同じような胴長体型の動物が狩猟鳥獣にも非狩猟鳥獣にも多く存在することから、間違えやすい動物種として狩猟免許の試験問題に出題されることも珍しくありません。
テンは果実や昆虫などを食べる雑食性で、主に樹上で生活しているため、木がある場所であれば森林から民家まで様々な場所に姿を現します。大きさは頭胴長約45cm 尾長約20cmで、雄は雌より少し大きい体格をしています。
テンは雌雄共に季節によって体毛が生え換わり、春先から秋ごろにかけた夏の間は顔が黒く体が暗めの黄褐色に、秋から春先にかけた冬の間は顔が白く体は明るい黄褐色・黄色に変化します。
間違えやすい非狩猟鳥獣
全く経験の無い時点では、狩猟鳥獣の見極めはかなり難しく感じられるかもしれません。
ですが、鳥類図鑑や狩猟に関する資料、インターネット上の画像などを練習問題として何度も確認することで、見極めるポイントを少しずつ掴めるようになってきます。
狩猟鳥獣の識別のコツ
実際の狩猟では、野生鳥獣を目の前にして、その場で狩猟鳥獣であるか否かの判断を下すことになります。
- 外見の特徴(模様・色・大きさ)
- 生息地(淡水・海・森林など)
- 習性(活動時間・生活環境)
これらを把握しておくことで、識別するための大きな判断材料となるでしょう。
もし非狩猟鳥獣を狩猟してしまったら
狩猟とは指定された狩猟鳥獣を捕獲等することであるため、それ以外の非狩猟鳥獣を狩猟することは法律で禁止されています。

この大前提を踏まえたうえで、もし万が一、誤って非狩猟鳥獣を狩猟してしまった場合はどのような対処・処分が下される可能性があるのでしょうか。
法律上では、
狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲してしまった場合は鳥獣保護法違反とみなされ、「これに違反する者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とされています。
2017年に起きた事件
とあるアウトドア雑誌の企画で取材を受けた狩猟者が、取材中に誤って非狩猟鳥獣を狩猟してしまい、更には各関係者がそれに気付かずに雑誌を出版してしまったことから、非狩猟鳥獣の誤射が公になったという事件がありました。
この後、出版社は謝罪だけでなく誤射後の対処等を記事や公式ホームページに掲載し、多くの狩猟者が正しい知識を学ぶ機会となりました。
非狩猟鳥獣を誤射してしまった場合の正しい対応
まず、警察署と都道府県に非狩猟鳥獣を誤射した旨を連絡することです。
- 警察署 ➡ 鳥獣保護法違反の処分に関わる取り調べ等が行われます。
- 都道府県 ➡ 狩猟免許の所持や狩猟者登録の継続についての対応が行われます。
ただし、非狩猟鳥獣の誤射に関する都道府県や警察署の対応は、鳥獣保護法の中であまり細かく指定されていないため、この例はあくまで一例であることを頭に入れておきましょう。

ポイント
狩猟歴10数年のベテランでさえ見極めが難しい狩猟鳥獣・非狩猟鳥獣も存在するため、確信を持てない鳥獣に関しては狩猟を行わない事が一番の策と言えるでしょう。