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鳥獣被害対策実施隊の設置で変化するもの、変化しないものは?その役割と活動内容

鳥獣被害対策として国をあげて設置を推進する“鳥獣被害対策実施隊”とは何なのか。設置することで変化する事しない事、その役割、活動内容を紹介します。

鳥獣被害対策実施隊とは。設置の目的と役割

鳥獣被害対策実施隊とは、近年深刻化している鳥獣被害を食い止めるべく制定された、狩猟人材を確保するための取り組みです。

今まで、鳥獣被害状況や鳥獣の捕獲要請などは一旦市町村を経由し、地元の猟友会へと外部委託する形で行われていました。しかし、市町村や猟友会が様々な対策を施すも、鳥獣被害を取り巻く状況は広域化・深刻化するばかりで、状況を改善するための新たな対策案が必要とされていました。

そこで、平成19年に新たに制定された鳥獣被害防止特別措置法では、鳥獣被害防止に積極的に取り組んでくれる人を鳥獣被害対策実施隊として指名して優遇措置を与えることで、各市町村及び狩猟者に今まで以上に鳥獣被害対策に力を入れてもらおうとしたのです。

それでは、鳥獣被害対策実施隊にはどのような人が加わることが出来るのでしょうか。

鳥獣被害対策実施隊とは、正式には「対象鳥獣の捕獲、防護柵の設置その他の被害防止計画に基づく被害防止施策の適切な実施」を行う人のことで、「被害防止対策に積極的に取り組むことが見込まれる者」であれば、狩猟免許の保持や就業時間の規定などの条件という訳ではありません。取り組み内容や隊員数、業務時間等は全国で統一されていないため、市町村長が上記の条件をもって任命・指名した人であれば隊員になることが可能です。

そのため、中には市町村の鳥獣被害対策などを行う課に属する行政職員や実際に被害に悩みながらも対策を行う農業者も含まれます。

鳥獣被害対策実施隊設置で変化すること、変化しないこと

鳥獣被害対策実施隊の設置は、日本の鳥獣被害対策においてどのような変化をもたらすのでしょうか。

それは、設置以前と比べ、現場で活躍する人により多くの助成・補償を与えるようになったことです。鳥獣被害対策に関する国からの支援は、従来、対策案を会議したり地域との協力を得たりする協議組織“鳥獣被害対策協議会”に対して行われていましたが、鳥獣被害対策実施隊の設置が推進された平成24年度以降は、実際に鳥獣の捕獲や追い払い、点検、見回り、柵等の設置活動を行う現場の人に向けて助成が強化されることとなったのです。

もちろん対策協議なども大切ですが、やはり実際に活動を行う人にも活動しやすい環境を提供しようということで、この取り組みが出来上がったのです。

具体的な優遇措置は大きく5つあります。

1つ目は、鳥獣被害対策実施隊に任命された人は非常勤公務員扱いされることとなり、活動中の事故等は公務災害として補償が適応されるようになるのです。

本来狩猟免許を所持する狩猟者は、年会費を支払って大日本猟友会の「狩猟共済」に加入するか、個人で各保険に加入して狩猟を行う必要がありました。しかし、この優遇措置があることで、鳥獣被害対策実施隊として活動中に起きた事故等は公務災害として補償を受けられるようになります。よって、狩猟者登録をしていない(狩猟免許を持っているにも関わらず狩猟活動を行っていない)人も実施隊員として任命・指名できることになります。

ただし、狩猟者登録を行っていないと狩猟活動は出来ないため、狩猟者登録をしていない人を鳥獣被害対策実施隊に指名・任命した場合は、狩猟免許が必要ない範囲での活動のみ行うことが出来ます。

2つ目は、狩猟者に課せられる狩猟税の軽減・非課税対応です。

狩猟免許を所持して狩猟を行う人には、基本的に毎年市町村に対して狩猟税を支払う義務があるのですが、市町村の鳥獣被害対策に積極的に取り組んでくれると見込まれて鳥獣被害対策実施隊に任命された場合には、この課税が一定額減額もしくは非課税となります。

3つ目は、銃刀法に基づく猟銃所持免許の更新等の申請に際して技能講習が免除されるというもので、一定の要件を満たした隊員にのみ適応される内容となっています。

4つ目は、ライフル銃所持の許可に関する特例です。

通常、ライフル銃を所持するためには「散弾銃を所持して10年」という条件があります。しかし、鳥獣被害対策実施隊に指名・任命された隊員であれば、「鳥獣被害を防止するためにライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」としてライフル銃の所持を特別に許可してもらうことが出来ます。

10年以上の経験は無いが鳥獣被害対策実施隊員としての活躍を期待できる人にも、積極的に協力してもらえるよう環境を整えたのです。最後に5つ目は、行政に対する優遇措置で、市町村が鳥獣被害対策に費やした経費の8割を国が特別交付税措置してくれるという内容です。

これら5つの優遇措置は各市町村が条例で定めているため、全ての市町村で適応されているとは限りません。市町村によって異なる部分もあるため、詳細はお住まいの市町村に確認してください。

具体的な活動内容と設置自治体

鳥獣被害対策実施隊の具体的な活動内容は、鳥獣被害におけるあらゆる対策が含まれます。

鳥獣の捕獲等はもちろん、追い払いや集落の点検見回り、侵入防止柵や緩衝帯の設置等があります。ただし、各市町村の被害状況や狩猟免許を持っている人か否かによっても、活動内容は大きく異なります。

また、先述した通り鳥獣被害対策実施隊員になるために狩猟免許は必須条件ではありませんが、狩猟免許を持っている場合は効果的に正しく捕獲を行える者として「対象鳥獣捕獲員」と呼ばれ、主に捕獲等を行う重要な役割を担います。

最後に、鳥獣被害対策実施隊を新たに設置する際の行政側の手続きについてご紹介します。

鳥獣被害対策実施隊は日本全国すべての市町村に設置されているわけでは無く、あくまで各市町村が任意で設置することが可能となっています。設置のためには2つの条件があります。

1つ目は、鳥獣被害対策実施隊として活動をする民間の人への報酬や補償措置を条例で定めることです。

実施隊員に指名・任命された人は非常勤公務員として活動していくことになるため、ボランティアではなく、日払い等での報酬が発生します。補償措置や狩猟税の軽減・非課税などは必ず適応されるわけではないため、鳥獣被害対策実施隊員の待遇などの条件は、必ず各市町村の条例で事前に決めておく必要があります。

2つ目は、各市町村長が実施隊員を任命又は指名するということです。実施隊員の決定は原則として各市町村長に委ねられており、狩猟免許を持つ人だけでなく、行政職員や農業者、必要に応じて近隣の市町村に在住する人を任命することも可能です。

ただし、中には人選を猟友会に委託する市町村もあります。こうすることで、市町村長が任命するよりも狩猟者としての腕が反映されるなどのメリットが考えられますが、一方で、本来任意である猟友会への入会が、鳥獣被害対策実施隊の必須条件になってしまうと言うデメリットも考えられます。

この鳥獣被害対策実施隊の設置と優遇制度は、制定されて4年間ほどは思うように普及せず、全国で設置した市町村数が100以下という状況が続きました。そこで、平成24年に国を上げてこの取り組みを推進したところ、平成24年4月には418の市町村が、平成27年10月には1012もの市町村が鳥獣被害対策実施隊を設置する事となり、全47都道府県で広く導入されるまでに至りました。

鳥獣被害対策実施隊の優遇制度は、実施隊員だけでなく行政側への優遇もあり、条例によって臨機応変に変更することが可能であるため、ここまで早く・広く普及したと言えます。

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